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職場のハラスメント対策:人事担当者が押さえるべき基礎知識と実践法
2024年12月11日 ハラスメントハラスメントは職場環境を悪化させ、企業の評判や生産性に深刻な影響を与えます。人事担当者や管理職にとって、適切なハラスメント対策を講じることは法的義務であり、従業員の安全と企業の健全な成長を守る上で欠かせません。本記事では、職場におけるハラスメントの基本知識から、効果的な予防策・対応方法まで、実践的なアプローチを解説します。
目次職場におけるハラスメントとは
職場におけるハラスメントは、従業員の尊厳を傷つけ、職場環境を悪化させる深刻な問題です。
人事担当者や管理職は、ハラスメントの定義、種類、法律上の位置づけを正確に理解し、適切な対策を講じる必要があります。
ハラスメントの定義
ハラスメントとは、相手の意思に反して不快な状態に追い込む言動のことを指します。
職場におけるハラスメントは、労働者の権利を侵害し、心身の健康を害する可能性がある行為です。
主な種類と特徴
職場で発生するハラスメントには、主に以下の種類があります。
- パワーハラスメント(パワハラ):職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為1。
- セクシュアルハラスメント(セクハラ):相手の意思に反する性的な言動により、労働条件に不利益を与えたり、就業環境を害する行為。
- マタニティハラスメント(マタハラ):妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いや嫌がらせ。
これらのハラスメントは、職場環境を悪化させ、労働者の生産性や企業の評判に深刻な影響を与えます。
法律上の位置づけ
2020年6月に「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が施行され、企業にはハラスメント防止のための措置が義務付けられました。
この法律では、パワハラ、セクハラ、マタハラなどの防止措置を講じることが求められています。
また、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法においても、セクハラやマタハラの防止措置が義務化されています。
企業は法的義務を果たすだけでなく、従業員が安心して働ける職場環境づくりに取り組む必要があります。
ハラスメントの理解
人事担当者や管理職は、ハラスメントの定義や類型を理解し、その影響を認識した上で効果的な防止策を講じる必要があります。
パワハラの定義と6つの類型
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場における最も一般的なハラスメントの一つです。
パワハラは、「職場における優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害する行為」と定義されます。
厚生労働省は、パワハラを以下の6つの類型に分類しています。
- 身体的な攻撃:暴行・傷害
- 精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
- 人間関係からの切り離し:隔離・仲間外し・無視
- 過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
- 過小な要求:業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
- 個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること
これらの行為が、業務の適正な範囲を超えて行われた場合、パワハラとみなされる可能性があります。
セクハラの定義と形態
セクハラは、「職場における性的な言動に対する労働者の対応により、労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されること」と定義されます。
セクハラには主に2つの形態があります。
- 対価型セクハラ:性的な要求に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、解雇、降格、減給などの不利益を受けること
- 環境型セクハラ:性的な言動により就業環境が不快なものとなり、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業する上で看過できない程度の支障が生じること
具体的な例としては、不必要な身体的接触、性的な冗談やからかい、性的な噂の流布、性的な要求などが挙げられます。
ハラスメントが及ぼす影響
パワハラやセクハラは、被害者個人だけでなく、職場全体や企業にも深刻な影響を与えます。
- 被害者への影響:メンタルヘルスの悪化、モチベーションの低下、業務効率の低下
- 職場への影響:チームワークの崩壊、職場の雰囲気悪化、生産性の低下
- 企業への影響:人材流出、企業イメージの低下、訴訟リスクの増加
これらの影響を防ぐため、企業は積極的にハラスメント対策に取り組む必要があります。
企業に求められるハラスメント対策
企業には、ハラスメントのない健全な職場環境を構築する責任があります。
法的義務を理解し、適切な防止措置を講じることが求められています。
ハラスメント防止のための4つの措置
厚生労働省は、企業に対して以下の4つのハラスメント防止措置を求めています。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- プライバシー保護や不利益取扱いの禁止等の徹底
これらの措置を確実に実施することで、ハラスメントの予防と適切な対応が可能となります。
効果的な社内研修の実施方法
ハラスメント防止のためには、定期的な社内研修が不可欠です。
効果的な研修を実施するためのポイントは以下の通りです。
- 対象者に応じた内容:管理職向け、一般社員向けなど、対象者に応じた内容を準備する
- 具体的な事例の活用:実際のハラスメント事例を用いて、グループディスカッションを行う
- ロールプレイの実施:ハラスメント場面を想定したロールプレイを通じて、実践的なスキルを身につける
- 最新の法律や判例の紹介:ハラスメントに関する最新の法律や判例を紹介し、理解を深める
- 定期的な実施:年1回以上の定期的な研修を実施し、継続的な意識向上を図る
これらの方法を組み合わせることで、より効果的なハラスメント防止研修を実施することができます。
ハラスメント発生時の適切な対応
ハラスメントが発生した場合、企業は迅速かつ適切な対応を取る必要があります。
被害者の保護と公正な調査を行い、再発防止に向けた取り組みを実施することが重要です。
相談窓口の設置と運用
ハラスメントの早期発見と適切な対応のために、相談窓口の設置は不可欠です。
効果的な相談窓口の運用のポイントは以下の通りです。
- 複数の窓口設置:性別や立場に配慮し、複数の相談窓口を設置する
- プライバシーの保護:相談者のプライバシーを厳重に保護する体制を整える
- 専門知識を持つ担当者の配置:ハラスメントに関する専門知識を持つ担当者を配置する
- 外部窓口の活用:必要に応じて、外部の専門機関と連携した相談窓口を設置する
- 相談しやすい環境づくり:相談者が不利益を受けないことを明確にし、安心して相談できる環境を整える
これらの点に配慮することで、従業員が躊躇なく相談できる窓口を運用することができます。
事実関係の調査と対処
ハラスメントの申し立てがあった場合、公正かつ迅速な事実関係の調査が必要です。
調査と対処の流れは以下の通りです。
- 調査チームの編成:中立的な立場の者で構成された調査チームを編成する
- 被害者と加害者の双方からの聴取:双方から詳細な事情聴取を行い、客観的な事実関係を把握する
- 関係者からの情報収集:必要に応じて、目撃者や関係者からも情報を収集する
- 証拠の収集と分析:メールやチャットログなどの客観的な証拠を収集し、分析する
- 調査結果の報告:調査結果を経営層に報告し、対応方針を決定する
- 適切な措置の実施:調査結果に基づき、加害者への処分や被害者の保護など、適切な措置を講じる
調査の過程では、プライバシー保護に十分配慮し、不利益取扱いの禁止を徹底することが重要です。
再発防止策の策定と実施
ハラスメント事案が発生した場合、再発防止に向けた取り組みが不可欠です。
効果的な再発防止策には以下のようなものがあります。
- 原因分析の実施:ハラスメントが発生した背景や要因を詳細に分析する
- 企業方針の再周知:ハラスメント防止に関する企業方針を全社員に再周知する
- 研修内容の見直し:ハラスメント防止研修の内容を見直し、より実効性のあるものに改善する
- 管理職の意識改革:管理職向けの特別研修を実施し、ハラスメント防止の重要性を再認識させる
- 職場環境の改善:コミュニケーションの活性化や業務の見直しなど、職場環境の改善に取り組む
- 定期的なアンケート調査:従業員を対象としたアンケート調査を定期的に実施し、職場の状況を把握する
これらの再発防止策を確実に実施し、継続的に見直すことで、ハラスメントのない職場環境づくりを進めることができます。
まとめ:健全な職場環境づくりに向けて
ハラスメント対策は、企業の社会的責任であると同時に、生産性向上や人材確保の観点からも重要な取り組みです。
本記事で解説した基本知識と実践法を踏まえ、従業員が安心して働ける職場環境を実現することで、企業の持続的な成長と発展につながります。
ハラスメント対策は、企業の競争力強化にも直結する重要な経営戦略の一つであることを、改めて認識する必要があります。
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