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職場のハラスメントの種類とその対策|人事担当者が知っておくべきポイント
2024年12月18日 ハラスメント職場でのハラスメントは、従業員の働きやすさや職場全体の生産性を損なう深刻な課題です。パワハラやセクハラをはじめとするさまざまな種類のハラスメントについて理解を深めることで、問題の予防や解決が可能になります。本記事では、ハラスメントの種類や具体例、対策を解説し、職場環境の改善に役立つ情報をお届けします。法的義務を踏まえた具体的な対策方法を学び、ハラスメントのない健全な職場環境づくりにお役立てください。
目次ハラスメントの基本的理解
ハラスメントは職場環境を悪化させ、従業員の心身の健康や企業の生産性に深刻な影響を与える重要な問題です。
人事担当者や管理職は、ハラスメントの定義を正確に理解し、その特徴や影響を認識することが重要です。
この章では、ハラスメントの基本的な概念と、職場におけるハラスメントの特徴、そしてそれが及ぼす影響について解説します。
ハラスメントの定義
ハラスメントとは、「いやがらせ」や「迷惑行為」を指す言葉で、相手の意に反する言動や行為によって、不快感や精神的苦痛を与える行為全般を意味します。
職場におけるハラスメントは、優越的な関係や立場を利用して、業務の適正な範囲を超えた言動により、就業環境を害する行為と定義されます。
ハラスメントは単なる個人間の問題ではなく、組織全体に影響を及ぼす重大な問題です。
そのため、2020年6月から改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が施行され、企業にはハラスメント防止のための措置を講じることが法的義務として課されています。
職場におけるハラスメントの特徴
職場におけるハラスメントは、以下の3つの要素をすべて満たすものと定義されます。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 労働者の就業環境が害されるもの
これらの要素を満たす行為がハラスメントとして認定されます。
ただし、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、ハラスメントには該当しません。
職場におけるハラスメントは、上司から部下だけでなく、同僚間や部下から上司に対しても発生する可能性があることに注意が必要です。
ハラスメントが及ぼす影響
ハラスメントは、被害者個人だけでなく、職場全体に深刻な影響を与えます。
被害者は精神的ストレスや身体的不調を訴え、最悪の場合、休職や退職に至ることもあります。
これにより、職場の生産性が低下し、企業の評判にも悪影響を及ぼします。
また、ハラスメントが蔓延する職場では、従業員のモチベーションが低下し、コミュニケーションが阻害されます。
結果として、チームワークの崩壊や業務効率の低下、優秀な人材の流出などの問題が生じる可能性があります。
さらに、法的リスクや企業イメージの低下など、企業経営にも重大な影響を与える可能性があります。
主なハラスメントの種類と具体例
職場で発生するハラスメントには、様々な種類があります。
この章では、法律で定義されている主要なハラスメントについて、その定義と具体例、法的規制を解説します。
パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントについて詳しく説明し、人事担当者や管理職が各ハラスメントの特徴を理解し、適切な対策を講じるための知識を提供します。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場における優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害する行為と定義されます。
パワハラは、以下の6つの類型に分類されます。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
具体例としては、理不尽な叱責や暴言、必要な情報を与えない、能力を超える業務の強要などが挙げられます。
企業は、パワハラ防止のための方針の明確化や相談体制の整備が法律で義務付けられています。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることを指します。
セクハラは、「対価型」と「環境型」の2つに分類されます。
- 対価型セクハラ:労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること
- 環境型セクハラ:性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者が就業する上で見過ごすことができない程度の支障が生じること
具体例としては、不必要な身体接触、性的な冗談やからかい、性的な噂の流布などが挙げられます。
企業には、セクハラ防止のための方針の明確化や相談窓口の設置が義務付けられています。
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)は、妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いや、これらに関する言動により就業環境が害されることを指します。
マタハラは、女性労働者に対するものだけでなく、男性労働者の育児休業取得等に関するハラスメント(パタニティハラスメント)も含まれます。
具体例としては、妊娠を理由とする降格や退職強要、育児休業取得を理由とする不利益な配置転換などが挙げられます。
これらのハラスメントは、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で禁止されており、企業には防止措置を講じることが義務付けられています。
マタハラ防止は、女性の活躍推進や少子化対策の観点からも重要な課題となっています。
その他の職場におけるハラスメント
職場では、法律で明確に定義されているハラスメント以外にも、様々な形態のハラスメントが存在します。
この章では、比較的新しい概念のハラスメントについて、その定義、具体例、注意点を解説します。モラルハラスメント、カスタマーハラスメント、就活ハラスメントなど、多様化する職場のハラスメントについて理解を深め、適切な対応策を考える上での参考となる情報を提供します。
モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメント(モラハラ)は、言葉や態度、身振りや文書などによって、継続的に相手の人格や尊厳を傷つけ、精神的に追い込む行為を指します。
直接的な暴力や暴言を伴わないため、周囲から気づかれにくい特徴があります。
具体例としては、無視や仲間外れ、過度の監視、嫌がらせ、言葉による脅し、批判の繰り返しなどが挙げられます。
モラハラは、被害者の自尊心を低下させ、長期的には深刻な精神的ダメージを与える可能性があります。
職場では、上司や同僚からのモラハラが問題となることがあり、組織の雰囲気や生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。
カスタマーハラスメント
カスタマーハラスメントは、顧客や取引先からの過度な要求や理不尽な言動により、従業員が精神的苦痛を受けることを指します。
サービス業や小売業など、顧客と直接接する機会の多い業種で問題となっています。
具体例としては、暴言や暴力、過度なクレーム、執拗な要求、性的な言動などが挙げられます。
カスタマーハラスメントは、従業員のメンタルヘルスを悪化させ、離職率の上昇や業務効率の低下につながる可能性があります。
企業は、従業員を守るための対応マニュアルの整備や、顧客への啓発活動を行うことが重要です。
就活ハラスメント
就活ハラスメントは、就職活動中の学生や求職者に対して、企業の採用担当者や面接官が行う不適切な言動や行為を指します。
就職活動という立場の弱い状況を利用した、様々な形態のハラスメントが問題となっています。
具体例としては、不適切な質問(出身地、家族構成、結婚予定など)、長時間の拘束、過度な圧迫面接、内定辞退の強要などが挙げられます。
就活ハラスメントは、学生の心理的負担を増大させるだけでなく、企業のイメージダウンや優秀な人材の獲得機会の損失にもつながります。
企業は、採用担当者への教育や面接ガイドラインの整備など、適切な採用活動の実施に努める必要があります。
効果的なハラスメント防止対策
ハラスメントのない健全な職場環境を作るためには、組織全体で取り組む体系的な防止対策が不可欠です。
この章では、企業が実施すべき効果的なハラスメント防止対策について解説します。
会社の方針明確化と規定の整備、従業員教育と研修の実施、相談窓口の設置と対応体制の構築、職場環境の改善とコミュニケーションの活性化など、具体的な施策を紹介し、それぞれの実施方法と期待される効果について詳しく説明します。
会社の方針明確化と規定の整備
ハラスメント防止の第一歩は、企業としての明確な方針を示し、具体的な規定を整備することです。
就業規則にハラスメント禁止条項を盛り込み、どのような言動がハラスメントに該当するかを明確に定義します。
また、ハラスメント行為に対する懲戒処分の基準を明確にし、全従業員に周知することが重要です。
方針と規定の整備により、企業のハラスメントに対する姿勢が明確になり、従業員の意識向上につながります。
また、問題が発生した際の対応基準が明確になるため、公平で迅速な対応が可能になります。
定期的に方針や規定を見直し、社会情勢の変化に合わせて更新することも重要です。
従業員教育と研修の実施
ハラスメント防止には、全従業員を対象とした継続的な教育と研修が不可欠です。
定期的な研修を実施し、ハラスメントの定義や具体例、法的責任、防止策などについて学ぶ機会を設けます。
特に管理職向けの研修では、ハラスメント防止のためのリーダーシップや部下への適切な指導方法について重点的に学ぶことが重要です。
教育と研修により、従業員のハラスメントに対する理解が深まり、自身の言動を見直すきっかけとなります。
また、ハラスメントを見かけた際の適切な対応方法を学ぶことで、組織全体での防止意識が高まります。eラーニング、ワークショップ、ロールプレイング、ケーススタディなど、多様な形式の研修を組み合わせることで、より効果的な教育が可能になります。
また、ハラスメント防止に関する社内報や掲示物の活用、定期的なアンケート調査の実施なども、継続的な意識向上に役立ちます。
相談窓口の設置と対応体制の構築
ハラスメントの早期発見と適切な対応のために、信頼性の高い相談窓口の設置と効果的な対応体制の構築が重要です。
相談窓口は、社内外に複数設置し、匿名での相談も受け付けるなど、相談者が安心して利用できる環境を整えます。
また、相談を受ける担当者には、専門的な研修を受けさせ、適切な対応ができるようにします。
対応体制としては、相談内容の調査、事実確認、解決策の提案、フォローアップまでの一連のプロセスを明確にします。
公平性と透明性を確保するため、第三者委員会の設置や外部専門家の活用も検討します。
相談窓口の存在と利用方法を全従業員に周知し、定期的に利用を促すことで、問題の早期発見と解決につながります。
プライバシー保護にも十分配慮し、相談者が不利益を受けることのないよう徹底します。
職場環境の改善とコミュニケーションの活性化
ハラスメントの根本的な予防には、健全な職場環境づくりとコミュニケーションの活性化が不可欠です。
オープンで風通しの良い職場環境を整備し、従業員同士が互いを尊重し合える雰囲気を醸成します。
具体的には、定期的な1on1ミーティングの実施、チームビルディング活動の導入、多様性を尊重する文化の醸成などが効果的です。
また、業務の可視化や適切な業務分担、長時間労働の是正など、ストレスの少ない職場環境づくりも重要です。
コミュニケーションツールの活用や、部署間交流の機会を設けることで、組織全体の風通しを良くすることができます。
これらの取り組みにより、ハラスメントの芽を早期に摘み取り、働きやすい職場環境を実現することができます。
不機嫌ハラスメントなど、日常的なコミュニケーションの中で生じる小さなストレスにも注意を払い、お互いを思いやる姿勢を育むことが大切です。
まとめ:ハラスメントのない職場づくりに向けて
アナタにあった職場を紹介します!
ハラスメント対策は、従業員が安心して働ける環境を整え、生産性を高めるうえで欠かせない取り組みです。
企業の管理職や人事担当者は、ポリシーの策定や相談窓口の整備、従業員教育の実施を進めることが求められます。
また、従業員一人ひとりが問題意識を持ち、早期に適切な対応を取ることが重要です。
ハラスメントの防止と改善に向けた具体的な行動を積み重ねることで、企業全体の信頼性と職場の健全な成長につながります。
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